猫の異物誤飲・誤食の危険は、意外と身近に潜んでいます。異物誤飲・誤食は猫と生活する中で、遭遇することの多い事故の1つで、私たちの生活においても、猫が口にすると危険なものが沢山あります。
人間の幼児と同じように、猫も好奇心から何気なく口にして飲み込んでしまうのです。誤飲・誤食したものは、糞や嘔吐により自然に排出されることもありますが、排出されなければ内視鏡や開腹手術を必要とする場合もあり、発見が遅れると最悪命を落とすこともあります。
今回は身近にありながら意外に危機意識が薄い異物誤飲・誤食について、まとめてみました。
猫の異物の誤飲・誤食は、家族が見ていないところでこっそり発生していることがあります。やんちゃな猫であればある程度家族も警戒していますが、お留守番をさせたり、電話中など家族の目を離した隙をみて口にいれることもあり、どこで起きてもおかしくありません。
ですから、早期発見・早期治療のためには、まずどのような症状が異物誤飲・誤食の症状かを知ってくことが重要なのです。
①動きが緩慢になる、ぐったりしていて元気がない、起き上がらない
②食欲不振
③呼吸が荒い
④吐くしぐさをするが嘔吐物がない
⑤水を飲んで吐くが内容物が水のみ
⑥短時間で高頻度の嘔吐などの症状が見られる
などがあげられます。そして異物は消化管のどこかで詰まっている可能性があります。
人間も猫も同じですが、異物が口に入って移動していくのは、
喉→食道→胃→小腸→大腸→肛門の順に移動し上手くいけば消化・排出されます。
異物誤飲・誤食した場合、喉・食道・胃の3箇所でものが詰まって誤飲の症状を引き起こすことが多いといわれています。
喉、食道に異物がつまると、気道を圧迫するので、呼吸ができなくなり窒息の恐れがあります。苦しそうに呻いたり、意識がもうろうとしているので症状はすぐわかります。一刻を争う状況ですので、迅速な対応が必要になります。
また胃で詰っている場合は、異物が胃の粘膜を傷つけ、痛みを伴い、出血していることもあります。この異物が腸まで到達し詰まってしまうと、腸閉塞を引き起こしその箇所から壊死を起こすこともあり、命に関わることがあります。
完全室内飼いでの異物誤飲・誤食が起きる原因は、飼い主の不注意と知識不足によるものがほとんどです。また、外での飼育はこうした誤飲・誤食のリスクのなかに放つことも含まっており、外から戻ってきたらよく観察が必要です。
誤飲・誤食しやすいものを、猫の目につく場所に置く、猫が口にすると危険な物(食べ物・飲み物他)を把握していないことで起きます。
猫が誤飲・誤食をすると危険な食べ物の一覧です。どこのお家でも1つは置いてあるものも多くあります。
・チョコレート・ココア
・ぶどう・レーズン
・キシリトール
・玉ねぎ・長ネギ・ニラ
・エビ・カニ・貝類・イカ・タコ
・ハム・ソーセージ・珍味・ちくわ
・ケーキ・クッキーなど
・大量のレバー
・アボカド
・アンズ
・サトイモ
・トマト
・ナス
・モモ・スモモ
など
牛乳については意外と思われる方もいらっしゃると思いますが。本来子牛をそだてるための乳で、猫が飲むべきものではありません。そのため消化できず下痢を引き起こすことが多くあります。
コーヒー
お酒
牛乳
など
誤飲・誤食以外に、吸い込んで体にはいることで危険なものもあります。アロマテラピーのオイルは植物由来のものが多くあり、猫が口にすると毒性の強いものもあります。ですから吸い込んでしまっても体に異変が起きるケースも有ります。
・アロマテラピーの煙、
・アロマオイル
・観葉植物
・殺虫剤
・タバコの煙(副流煙)
など
細かく呑み込めてしまうものは、どうしても誤飲誤食が起きがちです。また、消化できなかったり、詰まりやすいものも多く、管理には家族の注意が必要です。
・布、ティッシュ、アルミホイル・糸、リボン
・ウレタンマット
・猫用のおもちゃ(特に咬みちぎれるもの)
・輪ゴム、ヘアゴム、ピアス、イヤリング、ネックレス
・ボタン電池
・ビニール袋
・首輪の鈴
・串、ようじ、綿棒
①異物がのど、食道につまって苦しがっている場合は、体を抱えて下を向かせ、背中を軽くたたいて異物を吐き出させます。
②短時間、たたいても吐かない場合は、すぐにやめて病院につれていきましょう。
針やとがったものやひも状のものを飲み込んだときは絶対に引っ張らないようにしましょう。
また、呼びかけても反応がなく意識のない場合やけいれん発作など神経症状が起きている重症の場合は、吐いたものを喉に詰まらせることもあるので、処置はせず、すぐに病院に連れて行ったほうがよいでしょう。
この際、飲み込んでしまったものの残りがあるようなら、治療の方針を決めやすくなるので一緒に持っていきましょう。
万が一、人間が飲む薬を猫が飲んでしまった場合は、薬の成分がわかっていれば処置方法が明確になる場合もありますので、パッケージなど薬についてわかるものを必ず持って行き、獣医師に渡しましょう。
まさに口に入れた瞬間を見つけた際は大声で、だめ、と声をかけると驚いて飲み込んでしまうこともあります。
まずは目を合わせ気まずい雰囲気にし、接近して取り上げましょう。
まだ口の中にある場合は、ご飯やおやつ、他のオモチャ等で注意を引いて自ら離すようにこちらから誘導しましょう。
検査・治療の流れとしては、以下のようになります。
①事前検査(X線や超音波、レントゲン)
②催吐処置
③消化管バリウム造影検査
④内視鏡検査
⑤開腹手術
異物誤飲が疑われる場合は、最初にX線や超音波、レントゲンで画像診断を行います。
明らかに胃に異物がある状態で、吐きだせる異物であれば、薬による催吐処置を行うことがあります。
催吐処置で異物を取り出せない場合、必要に応じて消化管バリウム造影検査を行い、消化管の通過状態を確認することもあります。
食道から胃にかけての場合は全身麻酔をし、内視鏡で取り出せることもあります。
内視鏡では取り出せないような異物、もしくは異物が胃をこえて十二指腸からさらに後ろで詰まっている場合は開腹手術するしかないケースもあります。
内視鏡で取り出せる場合は、異物が突き刺ささることによる内臓の損傷などがなければ、体へのダメージは小さいため、日帰り入院で済むこともあります。一方で開腹手術をした場合は、最長で1週間~10日程度の入院が必要になり、その後も経過をみるために通院をします。
異物誤飲誤食は検査だけでも心身ともに負担がかかります。特に全身麻酔が必要になった場合心臓への負担が大きく体力のない子猫や高齢の猫にとっては、麻酔や手術そのものが命にかかわることもありますでの誤飲・誤食させないことが何よりも大切です。
猫の目の届くところには危険なものを置かないということ、なにが危険なものなのかをしっかり把握し、家に設置したりする前に危険かどうかしらべることを徹底するほか予防策はありません。
さらにおもちゃも遊んだ後は片付けることを徹底し、魚の骨、焼き鳥の串等、匂いで惹かれやすい食べ物や、アロマなどご家族の癒しになるようなことでも、場所を分けるなどをして行いましょう。
猫は犬のように叱るしつけはできません。さらに一度誤飲・誤食をした猫は何度も繰り返す傾向が高いといわれています。
危険なものから遠ざけ、持ち込まないことが最大の予防になると言えます。
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